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イチョウ並木が美しい明治神宮外苑の再開発をめぐり、反対の声が続出している。
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植生への影響が危惧されるだけではなく、高層ビル群・商業施設は神宮外苑にそぐわないとの指摘が出ている。
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近隣住人や訪問者が神宮外苑にどのような感情を抱いているか。それが無視される環境整備は拒否されるべきだ。
(吉永明弘:法政大学人間環境学部教授)
「まるでららぽーとのようだ」
再開発には二つの論点がある。一つは、これまでの環境が損なわれるのではないかという点、もう一つは、新しく生まれる環境が望ましいものかどうかという点だ。
そもそも再開発は、それまでの環境よりも良い環境を創出することが目的のはずだ。再開発の結果、前よりも良くなったという評価が生まれれば、その再開発は成功したことになる。逆に、再開発によって環境が悪化したと評価された場合には、その再開発は失敗だったということになる。
これまで神宮外苑再開発をめぐっては、主に第一の点、つまり樹木の伐採数が多すぎるとか、イチョウが枯れる恐れがある、といった点が注目を集めてきた。しかし同じくらい問題視されているのは、眺望を損なう高層ビルが出現することや、新しく建設される商業施設のデザインについてである。
商業施設に対しては、SNSで「まるでららぽーとのようだ」という趣旨の発信が話題になっている。再開発の事業主体に名を連ねる三井不動産が展開する「ららぽーと」を引き合いに、こうした商業施設を作ることに疑問を呈したものだ。
◎「ららぽーと」を引き合いに疑問を呈したSNSのまとめサイト
これは第二の点、つまりこれから創出される環境に対する不満の声である。
再開発をするのであれば、新しく生まれる環境はそれまでよりも良い環境でなければならない。高層ビル群や「ららぽーとのような商業施設」に対して批判が渦巻いてやまないのは、その期待を裏切っているからだろう。