(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年6月20日付)

G7広島サミットに集まったEUのリーダーたち(5月19日、EUのサイトより)

 ウクライナの戦争を機に、大西洋をまたぐ同盟は息を吹き返した。だが、米国と欧州の同盟国との関係は、ますます偏ったものになっている。

 米国経済は今、欧州連合(EU)や英国のそれよりかなり豊かでダイナミックだ。

 しかも、その差は開く一方だ。これは生活水準の相対的な差にとどまらず、幅広い影響を及ぼすだろう。

 EUは「戦略的自律性」を手に入れたいと思っているかもしれないが、米国の技術、エネルギー、資本、軍事的な保護に依存しているのが実情で、自律性に対する意欲は着実に衰えている。

ほぼ同じだった経済規模に大きな開き

 2008年にはEUと米国の経済規模は大体同じだった。だが、世界金融危機以降、両者の経済の命運は劇的に乖離していった。

 シンクタンクの欧州外交評議会(ECFR)に籍を置くジェレミー・シャピロ氏とヤナ・プグリエリン氏は次のように指摘している。

「2008年にはEU経済の規模は16兆2000億ドルで、米国の14兆7000億ドルより多少大きかった」

「2022年になると、米国経済が25兆ドルに成長したのに対し、EUと英国の経済規模は合計で19兆8000億ドルにしかなっていない」

「今では米国経済が3分の1近く上回っている。英国を除くEUとの比較では、米国の方が50%以上大きい」

 合計額は衝撃的だ。そしてこれを裏付けるのが、セクターごとに見受けられる欧州の出遅れぶりだ。

 欧州のテクノロジー業界はアマゾン、マイクロソフト、アップルといった米国企業に牛耳られている。

 株式時価総額で見た世界の7大テック企業はすべて米国企業だ。

 そのリストを上位20社まで拡張しても、欧州企業は2社しか顔を出さない(オランダのASMLとドイツのSAP)。