(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年6月2日付)

ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領(5月29日撮影、提供:Sunday Aghaeze/Nigeria State House/AP/アフロ)

 ナイジェリア人は長年、自国の指導者に強い猜疑心を抱いてきた。

 そして今、さらに一歩先へ進んだ。多くの国民は、5月末に新大統領に宣誓就任した人物が自分たちの指導者だと全く思っていないのだ。

 広く尊敬される作家のチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ氏がジョー・バイデン米大統領に宛てた公開書簡で、ボラ・ティヌブ氏が勝者と宣言された2月の大統領選挙の結果に疑問を投げかけた時、数百万人の声を代弁していた。

 同氏は選挙結果にお墨付きを与えたことで米国を非難した。

 選挙が盗まれたり買収されたりした証拠はない。だが、敗れた候補者たちの訴えにより法廷で争われている結果を疑う理由は多々ある。

異様に低い投票率が物語ること

 投票日は約束されたようなデジタル技術に支えられたクリーンなプロセスとはほど遠く、大混乱を極めた。

 多くの投票所は開場が遅れ、有権者の威嚇が蔓延した。票の集計はアップロードされず、不正の余地が生まれた。

 フィナンシャル・タイムズ(FT)のある記者がラゴス州スルレレの投票所を訪れた時には、武装した男性数人が大統領選の投票箱を強奪していった。

 最大の警告サインが投票率だ。

 今回はお決まりの一騎打ちではなく、まともな候補者3人が争う選挙になることが大きな話題になっていた。