(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年6月15日付)

政治がこれ以上単純になることはない。
米国の有権者は来年、自分を起訴した検察官に復讐を誓う刑事事件の被告人か、それともその対抗馬かという選択を迫られることになりそうだ。
この選挙は法の支配についての国民投票になる。
前者が勝ったら、恐らくは、すでにかけられている容疑での刑務所入りは免れる。後者が勝ったら、前者は十中八九刑務所行きだ。
民主主義というものをテレビのリアリティー番組の情け容赦ないゲームに圧縮できるとしたら、これがまさにそうだ。
もちろん、それはドナルド・トランプが好むところだ。
問題は、選挙に勝ったトランプが個人的な目的に司法制度を利用するか否かではない。
本人が繰り返し、法を復讐の道具にすると明言している。当選したらその通りにするだろう。彼の発言は文字通り受け取るのが賢明だ。
問題は、刑務所行きを回避するためにトランプがどこまで突っ走るかだ。次の選挙では、彼には失うものなど何もない。
これこそ、対抗馬であるジョー・バイデンが直面する最も恐ろしいことだ。