(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年5月29日付)

民主主義をより機能させるために「くじ引き」を導入するのも一つの手段だ

「ブレグジットは失敗した」

 英国が欧州連合(EU)離脱を決断したことについて誰よりも責任を負っていると言えるナイジェル・ファラージ氏は今、そう思っている。

 この見方は正しい。ただし、それはファラージ氏が考えているように保守党がしくじったからではなく、失敗に終わる運命にあったからだ。

 問題は、英国がなぜこの過ちを犯したか、だ。

ワシントンが警鐘鳴らした派閥政治

 その答えは、この国の民主主義の手続きがうまく機能していないから、というものになるだろう。

 選挙に加えて住民投票や国民投票を実施しても問題は解決されない。だが、一般市民による審議会というプロセスを追加すれば、解決できるかもしれない。

 ジョージ・ワシントンは大統領退任のあいさつで次のように語り、派閥を作る風潮に警鐘を鳴らした。

「ある一派と別の一派が交替で政権に就くことは(中略)それ自体が不愉快な専制政治である」

「しかし、その結果生じる無秩序と苦痛によって人々は次第に、一個人の絶対的な権力に安全と安らぎを求めるようになっていく」

 今日の米国の状況を見れば、その危険は明白だ。

 選挙で選ばれた者による現代の政治では、誤った情報を合理的に吸収した有権者の感情を操作することが権力につながる道になっている。

 それゆえ、デマゴギーに最も長けた人物が国家を支配するようになる公算が大きくなる。