(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年5月24日付)

「さようならG7、こんにちはG20」
2008年に米ワシントンで開かれた主要20カ国・地域(G20)の第1回首脳会議についての記事に英エコノミスト誌はこんな見出しを掲げ、「旧秩序に決定的な変化」が起きていることの表れだと評した。
そして今、翌2009年4月にロンドンで開かれたG20サミットで頂点に達した協力的な世界経済秩序への期待感が消滅した。
しかし、「さようならG20、こんにちはG7」とはとても言えない。
G7が牛耳っていた世界は、G20が協力し合う世界よりもはるかに遠い昔となった。世界全体で協力し合う体制も、西側が牛耳る体制もうまくいきそうにない。
では、これからどうなるのか。
残念ながら、その答えは「分断」かもしれないし、「アナーキー(無秩序)」かもしれない。
世界政府のマニフェストのよう
広島で開催されたG7首脳会議のコミュニケからは、そうした様子はうかがえない。それどころか、このコミュニケは思わず息をのむほど網羅的だ。
取り扱っている項目はウクライナ、軍縮・不拡散、インド太平洋地域、世界経済、気候変動、環境、エネルギー(クリーンエネルギーを含む)、経済的強靱性・経済安全保障、貿易、食料安全保障、保健、労働、教育、デジタル、科学技術、ジェンダー、人権・難民・移住および民主主義、テロリズム・暴力的過激主義および国際的な組織犯罪、中国、アフガニスタン、イランなどとの関係と本当に多岐にわたる。
語数にして1万9000語もあるコミュニケは、世界政府のマニフェストさながらだ。
これとは対照的に、2009年4月のロンドンG20首脳会議のコミュニケは3000語を少し超えた程度だった。