(英フィナンシャル・タイムズ紙 2023年5月12日付)

ケビン・マッカーシー下院議長と債務上限問題を話し合うジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領(5月16日ホワイトハウス執務室で、写真:ロイター/アフロ)

 どんな国も国家財政を刺激的なドラマのように運営すべきではない。

 政治と財政が衝突した時にどんな問題が生じるかについては、2015年のギリシャと昨年の英国が訓話を与えている。

 それにもかかわらず、米国は他国から教訓を学ぶ必要などないと感じている。

 それどころか、31兆4000億ドルの政府債務をめぐる米国自身の政治的な衝突に向かっている。その瞬間は早ければ6月にも訪れる。

 すべての人が来る戦いにおける英雄と悪役を選ぶよう求められており、その行方にかかる利害は大きい。

赤字が3倍以上に急増

 だが、より実務的な気質を持ち、債務上限をめぐる政治を脇へ置くことができる人にとっては、米国財政の基本的な健全性も同じくらい憂慮すべき問題のように思える。

 米国の連邦予算は赤字を垂れ流している。

 中立機関の米議会予算局(CBO)は、2023年会計年度(22年10月~23年9月)の最初の7カ月間に政府の基礎的な歳入が10%減少する一方、歳出が12%増加したと試算している。

 その結果、連邦政府の赤字は2022年会計年度の同期間の3倍以上に膨らんだ。

 弱い歳入は、キャピタルゲイン(売買益)の実現がCBOが2022年末に見込んだ水準より少なかったことや、米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和プログラムがドル箱から大きな重荷に転じたこと、そして基本的な景気回復が当初の統計値が示していたほど健全ではなかった可能性を反映している。