かつてはイスラエルや台湾も「ハシゴ外し」に

 武器供給側の「ご都合主義」は歴史をひもとけばいくらでも転がっている。

 たとえば1967年の第3次中東戦争では、イスラエルは敵対するエジプトやシリアなどに対し、空軍と戦車部隊で奇襲をかけて圧勝。数日で広大な占領地を得て停戦に持ち込んだ。「6日間戦争」と言われ、主力の仏製ミラージュ戦闘機が大活躍し、その後イスラエルはフランスにさらなる供与を求めた。

 ところがアラブ諸国に接近するなど方針転換したフランスは、対イスラエル武器禁輸を断行。逆に反イスラエル陣営側のリビアに同機を売り込んでいる。そこで仕方なくイスラエルは「クフィル」戦闘機を自国で開発し、アメリカからも戦闘機の大量供与を受けて難局を乗り切った。

 台湾も同様だ。大陸の中国と対峙し、“後見人”のアメリカに全幅の信頼を寄せ、武器もおんぶに抱っこの状態だった。だが冷戦真っ盛りの1970年代、「反ソ連」で利害を一致させた米中は急速に接近し、ソ連包囲網を強めていく。

 この頃、台湾は保有する米製戦闘機の老朽化に伴い、当時最新型のF-16の供与をアメリカに求めるが、中国との関係悪化を案じ要求を拒否した。

 アメリカ一辺倒の“副作用”を実感した台湾は、防衛の要である戦闘機の多系統化を進め、フランスのミラージュ2000の導入や国産戦闘機「経国(F-KC-1)」の開発に注力する。そこで「有力な戦闘機市場をフランスに奪われかねない」と慌てたアメリカは、その後台湾へのF-16売却を許可。結果的に米仏を両天秤にかけた台湾の作戦勝ちとなった。

 現在でも台湾空軍は、米製F-16、米製F-5小型戦闘機、仏製ミラージュ2000、国産の経国の「3系統・4機種体制」を保つ。

 製造国が同じ機体で揃えたほうが訓練や部品、メンテナンスなどで何かと好都合で経済的だが、自動車のリコールのように、万が一墜落事故に直結する深刻な欠陥が見つかれば、原因究明と改修が終わるまで全機地上待機を余儀なくされる。不都合が起きても代替が効かないため、複系統化は「保険」ともいえる。

 国籍の違う戦闘機を意識的に配備する国は意外に多く、グローバル・サウスにその傾向が強い。インドはその典型でロ・仏・国産の3系統を維持しているほか、中東・北アフリカ諸国にも“多国籍化”の国は多い。