打ち上げに成功した中国の有人宇宙船「神舟16号」(2023年5月30日、写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の有人宇宙船「神舟16号」の打ち上げが5月30日に行われた。

 宇宙飛行士3人を乗せた神舟16号は中国宇宙ステーション(CSS:Chinese Space Station)のコアモジュールとドッキングし、昨年(2022年)11月に打ち上げられた「神舟15号」がCSSから切り離されて帰還する。CSSに滞在する宇宙飛行士3人のメンバーチェンジも行われる。

 今回の神舟16号打ち上げ成功は、米中ロの宇宙覇権競争において、1つのマイルストーン、節目的な出来事と言われている。

 まず、新たに宇宙に旅立った中国人宇宙飛行士の1人が初の非軍人出身者、つまり民間人であるということ。そして、昨年の神舟15号の打ち上げで完成したCSSの本格的実験運用がスタートするということ。さらにもう1つは、米国の激しい対中半導体輸出規制を受けながらも中国が着々と宇宙開発を進めていることを世界にアピールできた、ということだろう。

 アメリカ、日本、欧州諸国、ロシアなどによる国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)の運用は、とりあえず2024年まで延長されたが、いつ終了になっても不思議ではなく、ISSが終了すればCSSが世界で運用中の唯一の宇宙ステーションとなる。このアドバンテージは、習近平が目論む「国際社会の新たな枠組みのリーダーになる」という野望を加速させる可能性もある。