スーパーエルニーニョの影響を最小限に食い止めるために

 以上見てきたとおり、今年はスーパーエルニーニョが発生する可能性が高く、日本の今年の夏は大気の振動が合わさって、ENSOとなる可能性もある。

 ただし、スーパーエルニーニョが発生した場合、どのような影響がどのくらいの規模で起こるのか、ということは先読みしづらい。その影響を人間の手でコントロールすることはさらに難しい。

 できることと言えば、早めの避難行動により、自然災害での人的被害を減らすことぐらいかもしれない。それでも、救える生命を守ることは大切だ。

 日本では近年、毎年のように各地で豪雨災害が発生している。テレビなどのニュースでは、河川が氾濫して広い地域で洪水が発生したり、土砂災害で多くの家屋が全壊してしまったりした様子が映像とともに報じられる。

 そうした報道が、防災意識を高めることにつながればよいが、頻繁に報じられることで、かえってマンネリ化につながる恐れもあるだろう。

 今年の夏は、スーパーエルニーニョの発生動向も含めて、最新の気象予報をこまめにチェックすることが必要だ。

【出典・参考資料】
*1:「エルニーニョ監視速報(No.368)」(気象庁 大気海洋部/令和5年5月12日)
*2:「エルニーニョ/ラニーニャ現象とは」(「エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間(季節単位)」(気象庁ホームページ)
*3:「季節アンサンブル予報システムの更新・エルニーニョ/ラニーニャ現象と日本の気候」(気象庁 地球環境・海洋部/平成27年度季節予報研修テキスト)
*4:「『スーパーエルニーニョ』卵が自然に固まる暑さ、また朝鮮半島を襲うか」(the hankyoreh/2023年5月17日配信)
*5:「絵でわかる地球温暖化」渡部雅浩著(講談社/2018年)
*6:「『観測史上最大に迫る』エルニーニョが今夏にも発生する可能性 気象庁発表」(テレビ朝日/2023年5月12日配信)
*7:「日本の天候に影響を及ぼすメカニズム」(気象庁ホームページ)
*8:「エルニーニョ現象が引き起こすリスク」(東京海上日動リスクコンサルティング、リスクマネジメント最前線2014)
*9:“Disease outbreak─Cholera-Tanzania-22 April 2016”(WHO)
*10:「世界保健機関、エルニーニョ現象で途上国の少なくとも6000万人が危機と警告」(WHO/2016年1月22日)
*11:“Climate of India”(Wikipedia,the free encyclopedia)
*12:「気象庁など、エルニーニョ現象に伴う東南アジア周辺の気温と降雨量への影響等を発表(2016.05.02)」(国立研究開発法人 国立環境研究所運営サイト、環境展望台)
*13:「最大級に発達か? エルニーニョの現状と影響」片山由紀子氏(YAHOO!ニュース/2015年8月23日)
*14:「アメリカの科学者ら、2015~2016年のエルニーニョでカリフォルニア沿岸の浸食は観測史上最大級と報告(2017.02.14)」(国立研究開発法人 国立環境研究所運営サイト、環境展望台)
*15:「ENSOの監視と予測」安田珠幾氏(公益社団法人日本気象学会、2017年度春季大会シンポジウム「最新の気象学が描き出す多彩な大気海洋結合現象」の報告)