気象学者が注目する大気の南方振動「ENSO」とは?
気候変動現象はそれだけではない。海のエルニーニョやラニーニャに、大気の南方振動が合わさると、“ENSO(エンソ)”という振動が起こる。
オーストラリアのダーウィンの気圧が高い年はフランス領タヒチ島の気圧が低く、逆にダーウィンの気圧が低い年はタヒチの気圧が高いというように、交互に上がったり下がったりする現象が発見された。
これは、南方振動(Southern Oscillation, SO)と呼ばれ、エルニーニョ(El Nino, EN)を合わせて“ENSO”というわけだ。
このENSOは、古くから気候システムにある変動現象であり、地球温暖化とは直接関係ないと考えられている。ただし、スーパーエルニーニョに伴うENSOが起これば、気象や天候への影響はさらに広範に及ぶとされる。
実は、いま気象学者の間で盛んにENSO研究されている。「過去にも常にENSOがあったのか?」「これから温暖化が進むとENSOはどうなるのか?」といったことが研究されているのだ。ちなみに、これまでの研究で20世紀のENSOの強さは、過去7000年の間で最大だったと推定されている*5。
日本の季節予報でもENSOが主要な予測因子となっている*15。ENSOはエルニーニョやラニーニャのピーク時だけでなく、発生時や衰退期にも生じるとされ、長期的な影響監視が必要となる。