「ありがとう」と労いの声をかけているか

「客商売なのだから、些細なことで客の揚げ足を取るのはおかしい」という意見もあるかもしれない。仮に滞在中にマナー違反を犯したとしても、よほどのことがない限り宿泊施設のスタッフがそれを指摘することはないし、スタッフの「少しでも気持ちよく過ごしていただきたい」と心を尽くす姿勢は変わらないだろう。

 しかし、どうせならスタッフから「またお越しいただきたい」と思われるようなスマートで感じのいい客を目指したいものだ。

 ホテルマンに取材をした際、多くの人が挙げた感じのいい客の共通項が、「『ありがとう』と言ってくださる方」だった。

 チップの慣習がない日本では、重いスーツケースを客室まで運んだり、連泊の際にタオルやシーツを替えたりすることは当然のサービスと受け取られがちだ。だからこそ、その都度スタッフの目を見て「ありがとう」と労いの言葉をかけると、「この方は会社でも部下に配慮ができる上司なのだろうな」と思うのだそうだ。

 “できるビジネスパーソン”はどの宿泊施設でも好感度が高い。「18時に外出したいのでタクシーを呼んでほしい」「明日は8時にチェックアウトするから領収証を用意して」と事前にスケジュールを伝えておけばスタッフも対応がしやすい。

 ホテルマンが「旅慣れた方だな」と感じるのは、コンシェルジュを秘書のように使いこなしている客だという。ホテルコンシェルジュの人脈やコネクションは侮れず、旅先で味方につければこれほど心強い存在はない。