(英エコノミスト誌 2023年5月6日号)
20年にわたって独裁色を強めてきたレジェップ・タイイップ・エルドアンが有権者に追い出される恐れがある。
オスマントルコ帝国のスルタンが居城としたイスタンブールのトプカプ宮殿が見下ろす海岸で、別の尊大な指導者を記念するものがお披露目されている。
全世界で今年最も重要な選挙となる選挙を5月14日に控え、ボスポラス海峡に入るよう先月命じられたトルコ初の国産空母「アナドル」だ。
現職のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、海岸沿いを航行して選挙運動を展開しているアナドルを見せびらかすことによって、愛国的な有権者を鼓舞したいと考えている。
だが、大統領のカリスマと派手な振る舞い、各種の給付金などでは不十分かもしれない。
トルコを2003年からずっと、独裁者のようなスタイルをますます強めながら支配してきたこの人物も、さすがに今回は涙をのむ可能性がある。
運命を決する選挙
本誌エコノミストが特集記事で伝えているように、この選挙戦はどちらに転ぶか全く分からない状況にある。
大半の世論調査は、エルドアン氏が僅差で対抗馬の後塵を拝していることを示している。
もしエルドアン氏が破れれば、まさに衝撃的な政治の大転換となり、世界各地にその影響が及ぶだろう。
トルコ国民はこれまでよりも自由になり、恐怖を覚えるものが減り、やがては今より豊かになる。
新政権は西側との傷んだ関係の修復に乗り出すだろう。
(トルコは北大西洋条約機構=NATO=加盟国だが、エルドアン氏の下では中東に混乱をもたらす行動を取り、ロシアに近づこうとしてきた)
そして最も重要なのは、ハンガリーからインドまでストロングマン(強権的な指導者)による支配が台頭している時代にあって、エルドアン氏が平和裏に排除されれば、独裁者は倒せるということを世界中の民主主義者に示すことだ。