(英エコノミスト誌 2023年5月6日号)
世界中の国々が悲惨な財政状況に向き合えずにいる。
政治には予算をめぐる諍いがつきものだが、今日の財政瀬戸際政策は本当に恐ろしい。
米国では、民主党と共和党が政府債務上限の引き上げをめぐってチキンゲームを繰り広げている。ドラマが白熱するにつれ、そのリスクは危険なほど高くなっている。
ジャネット・イエレン財務長官は、もし何の合意もまとまらなければ財務省は現金を使い果たし、6月1日に政府の請求書の支払いができなくなるかもしれないと語った。
投資家は、米国史上初のソブリン債デフォルト(債務不履行)が発生するリスクを相場に織り込み始めている。
無頓着な政治家
政治的な得点稼ぎは、もっと大きくて長期に及ぶ問題も見落としている。
人口が高齢化し、各種給付金の支出が増加し、政府の利息負担が増えるにつれて、米国の財政赤字は膨れ上がっていく。
本誌エコノミストの試算では、米国の年間財政赤字は2020年代末までに国内総生産(GDP)比で約7%に達する恐れがある。
この国では戦争や大不況の時期にしか見られなかった赤字幅だ。
そして心配なことに、赤字を圧縮する分別ある計画を持つ人が誰一人としていない。
世界各国の政府も同じようなプレッシャーに直面している。しかも米国と同じくらい無頓着なように見える。
欧州の政治家は、欧州中央銀行(ECB)が最も脆弱な国々の財政を間接的に下支えしているその時に、債務のルールを手直しする方法をめぐる愚かな議論にとらわれている。
中国では、中央政府が地方政府救済の準備をしている傍らで、公的債務の残高は「健全だ」と称されている。
各国政府は「財政おとぎの国」にはまり込んでいる。
災厄に見舞われる前に、出口を見つけ出さねばならない。