ディズニーはこれまで56年間、フロリダ州中央部の土地を州から税制上の優遇措置を含む特別自治区(Dependent Special District)として「譲渡」され、そこにディズニー・ワールドを建設し、膨大な収益と雇用を同州にもたらしてきた。

 それを共和党が支配するフロリダ州議会が廃止する法律を成立させ、デサンティス氏が署名制定してしまったのだ。

 ことの起こりは、2021年、フロリダ州がLGBTQ(性的少数派)について児童(幼稚園児から小学校3年生まで)に教えることを州法で禁じたことにディズニーが反発したことから

 ディズニー傘下のテレビ局はLGBTQを扱った子供向けアニメを放映しており、同社社員や関係者の中にはLGBTQが少なくない

 ディズニーにとってはフロリダ州のこの法案は、ビジネス的にも労使関係からも到底受け入れられるものではなかった。

 当時の経営最高幹部が同法案に反対したことからデサンティス氏はディズニー・ワールドに譲与していた「特別自治区」の特権剥奪を決めてしまった。発効は2023年6月。

 一方、拳を挙げたデサンティス氏にとって、ディズニー・ワールドはかけがえのない「金の卵を産む鶏」だ。

 ディズニー・ワールドには、世界中から年間2100万人の観光客が訪れ、関連企業も含めると7万人の雇用を創出している。

 年間の収益は170億ドル、7億8000万ドルの税金を州に納めている。

 元々、この見返りとして、同州はディズニー・ワールドに特別社債発行特権を与え、警察、消防、ガス・電気・水道サービスも隣接するオレンジ郡やオスセオラ郡からは独立させた「自治体」にしてきた。

 ディズニー・ワールドから特権を剥奪すれば、年間7億8000万ドルの税収が減り、これまでディズニーが賄ってきた行政サービスは郡が請け負うことになる。

 周辺住民には巨額の納税義務が生じる。住民とっては割に合わぬデサンティス行政ということになる。

 州議会がディズニーの特権を剥奪する法案を成立させたときから反対する声があった。

 それだけにデサンティス氏にとってはギャンブルだった。