そのためには第1ステップの段階で、負けの実態が「社員一人ひとりが扱っている仕事」の大きさにまで分解されていることが肝要だ。概論的に大きな分類の表現のままだと、個人へのひも付けはできない。かなり細かい、緻密な作業になる。

 クロスファンクショナルなタスクフォースでこそ、できる作業だ。

 そうやっていくと、市場で負けている症状のうち、1つの部署が関係している赤い糸の先っぽが、部署だけでなくそこにいる担当者のところにまで繋がってくる。決して個人名は出さない。しかしその当人は、赤い糸の先の商品名や商品番号を見れば、自分が関係していることが分かり、市場で起きているその負け戦の原因について、自分のことが指摘されていると分かる。部署ごとにこの作業を続ける。

 第3ステップでは、一旦市場から離れ、社内の1つの部署に着目する。そしてその部署に集まっている赤い糸を、一本一本逆にたどって、市場での出来事を見る。

 すると、その部署の社員の動きが、市場での負け戦にいかにつながっているか、「部署単位」でまとめることができる。

 この作業が終われば、自分の部署が市場の戦いのどこで弱みを生みだしているのか、自分の部署の「強烈な反省論」が出来上がる。

 社内で今まで問題だとやり玉に挙がっていた部署が、本当の悪玉とは限らない。「悪いのは他部署、あの人たち」と思っていた人が、実は自分の部署の、しかも自分自身の個人の罪が小さくないことに気づくのである。

失敗の本質(ボトム)を探る

 ここまでは、表面に見えている負けや病気の症状を、市場と社内を行き来しながら、たくさん追いかける作業だった。

 次の第4ステップでは、社内に注目する。まず、1つの部署が生んでいる負け症状を取り上げる。その症状の原因が、社内の別の部署の問題から来ていないかを点検するのである。人のせいにしたいことはきちんと表出しすればいい。陰でコソコソ不平を言っているのではなく、それをきちんと言うことが社内で「真の原因」を探す作業になるのだ。

 市場から始まってその部署まで来ていた赤い糸の先端が、さらに社内の他の部署に向かって延びていく。一部署では良かれと思っていた考え方や行動が、他部署で病気を生む原因になっていることは多い。その因果律を洗い出すのだ。

 あくまで全体最適の視点を保ちながら、トヨタ改善手法における、5回のなぜ、と同じことを繰り返し、ボトムの原因と思われるものに行き着くところまで、原因を辿って行くのである。