今回から2回にわたり、「デジタルツイン」について述べていく。

 シリーズ第5回の今回は理解編として、「デジタルツインとは何か」を理解してもらう。次回はアクション編として、「デジタルツインを構築する上で何から始めたらよいか」、具体的な事例を交えながら、お伝えしていこうと思う。

 もはや、「DX」を目指す上では欠かせない考え方、あるいは状態が「デジタルツイン」だ。読者の皆さまの多くは、既にご理解いただいていると思うが、改めて「デジタルツインとは何か?」について、深掘りしていこう。

予測不可能な世界を可能な限り、予測する

 突拍子もない話をお許しいただきたい。

 もしも5年前に「新型コロナ」の発生を予測できていたとしたら、この社会は、そしてあなた自身はどのような行動をとっただろう?

 企業は、業務を素早くリモートやオンラインに切り替え、IoTやAIによる自動化を一気に進めただろう。あなた自身も、そうしたパンデミックにおいても経済が滞らない社会を、築き上げたのではないだろうか?

 今さらそんな話をしても、もちろん仕方がない。しかし、一つだけ確かなのは、

「未来に起こることが予測できたなら、必ず、それに向けて準備ができる」ということだ。

 そして、ここからが重要なのだが、

「未来を予測できる企業と、できない企業の差は、ますます広がっていく」ことを知っていただきたいのだ。

 この「未来を予測する技術」こそが、今回お伝えする「デジタルツイン」という発想の源であることを、まずご理解いただきたい。

 「デジタルツイン」とは、現実世界で起こっていることを、デジタルの世界にまるで双子のように再現し、「時間を進めた先に、あるいはさまざまな環境が変化した先に、どんな事態が起こり得るのか?」のシミュレーションを可能にする状態、あるいは技術のことである。

 最も身近で分かりやすい「デジタルツイン」の例が、「天気予報」だ。

 よく目にする「天気図」は、まさに実際の空や雲の動きを、さまざまなデータを元に、地図上に再現したものである。

 近年、天気予報の精度の高さは、目を見張るものがある。かつては、「天気予報は当てにならない」と言われたものだが、今や数分後に降り出す雨まで予測してくれる。

 それだけ、膨大な過去データと、衛生からのリアルタイムのデータを、瞬時に解析することが可能になったということだろう。

 このように、デジタルツインは、既にわれわれの日常生活の中にも存在し、日々進化を遂げながら、より良い未来づくりを担っていることを、まずは押さえていただきたい。

「デジタルツイン」は、既に身近なところに数多く存在している。データが蓄積されればされるほど、未来の予測精度が上がる