コロナ禍で有効だった「非接触」「待たない」「並ばない」
現在、全国に約700のホテルを擁するアパグループ(海外、フランチャイズ、アパ直参画ホテル、建設・設計中を含む)。その中核をなすアパホテルで差別化の1つとなっているのが、宿泊予約、チェックイン、チェックアウトをそれぞれ1秒で済ませるシステム「アパトリプルワン」だ。
チェックアウト時はカードキーをチェックアウトボックスに投函するだけで済み、チェックインについても、同社の公式サイトアプリの「アパ直」で事前にオンライン決済しておけば、宿泊当日、ルームキーの受け取りはマイページ画面のQRコード(会員証)をかざすだけで、フロントでの手続きを簡素化した。
アパトリプルワンは、「非接触」「待たない」「並ばない」を特徴としているだけに、特にコロナ禍のこの3年は非常に有効でもあった。アパグループのIT事業本部長で、アパホテル常務取締役ホテル事業本部長の小塚智成氏はこう振り返る。
「もともと自動チェックイン機自体は、1984年にアパホテルの1号店ができた時、業界で初めて導入しています。アパトリプルワンのシステムは、コロナ禍が始まる直前にはサービスインできていました。それまでフロントでお客さまとお金のやり取りに時間がかかってしまっていたわけですが、事前にオンライン決済していただければ基本、キーの受け渡しだけになりますから、そこに特化したチェックイン機が作れると考えたのです。
チェックアウトに関しては、ルームキーをチェックアウトポストに入れるとその情報が瞬時にフロントに飛び、すぐに部屋の清掃に入れるところが強みですが、同様にチェックインもどうしても1秒にしたかった。当初、システムのベンダーさんからは最低でも2秒から3秒はかかると言われていたのですが、我々の1秒へのこだわりに納得していただき、開発に本腰を入れてくれました。
一番強調したい点は、アパグループは即断即決型のオーナー会社ですので、私がアパトリプルワンの企画を提案した後、すぐに承認してもらえたこと。企画が動き出してコンペにかけ、実際にサービスインするまでの延べ日数は277日で、これだけのスピード感を持って実現できたのはオーナー会社だからこそです」(小塚氏)
一方、たとえば米国ではチェックイン機がなくても、オンライン決済が済んでいれば、宿泊客の手持ちのスマートフォンをルームキー代わりにして入室ができる。日本でも旅館業法が改正となり、ICTの活用が謳われてはいるものの、基本は対面で鍵の受け渡しをしないといけない決まりで、そこは各自治体の判断もまちまち。米国のようにルームキーも不要にしていくには、いましばらく時間がかかりそうだ。