バンダイナムコアミューズメント DX部 ゼネラルマネージャーの菅野和民氏(撮影:宮崎訓幸)

 コロナ禍で甚大な影響を受けたアミューズメント業界。この分野の大手であり、ゲームセンターやテーマパークの運営、「太鼓の達人」やプライズゲームなどの業務用ゲーム機の企画・販売などを行うバンダイナムコアミューズメントも例外ではなかった。同社では、アミューズメントビジネスの新しい可能性を見出すべく、2022年4月にDX部を立ち上げ、本腰を入れてOMO(Online Merges with Offline)に取り組んでいる。アミューズメントビジネスの未来を展望すべく、同社DX部の責任者を務める菅野和民氏にインタビューした。

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■​バンダイナムコアミューズメントがDXで拓くアミューズメントビジネスの新境地(本稿)

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――アミューズメント業界の現状をお聞かせください。

菅野 和民/バンダイナムコアミューズメント DX部 ゼネラルマネージャー

1998年入社。入社以来ゲームセンター事業に長く関わり、エリアマネージャーとして事業戦略チーム、営業管理チームなど多方面から現場の運営に携わる。2019年に経営企画部に異動し、中期計画の策定プロジェクトや部署横断のプロジェクト推進などを担当。

菅野和民氏(以下敬称略) かつてゲームセンターが華やかなりし頃、業務用のゲームが一番ハイスペックである時代がありました。そこから家庭用ゲーム機、携帯電話、スマホとハードが進化するにつれて、徐々に業務用のゲームの市場は小さくなっていきましたが、ある程度のタイミングで底を打ち、ここ10年ぐらいはやや上昇傾向にあると感じます。

 ゲームセンターのあり方も変わってきており、現在、5000億円のゲームセンターの運営市場のうち、6、7割をプライズゲーム(景品を獲得することをゲームの主目的としたアーケードゲーム)領域が占めています。それによって、キャラクターグッズや“キャラクターを通じての体験”などを求めてご利用いただく方の比率が上がり、20年前にくらべて女性のお客さまも増え、客層がかなり変わりました。さまざまな世代の方がキャラクターに慣れ親しんでいただける時代になったことで裾野が広がり、そこが起点となって回復傾向にあると考えています。

――そんななか、2022年4月、御社にDX部が発足しました。

菅野 バンダイナムコグループのなかでバンダイナムコアミューズメントは、ゲームセンターやテーマパークのような「リアルエンターテインメント領域」を担当しています。これらはお客さまに施設を訪れていただく必要があるため、ここ数年のコロナ禍で非常に厳しい状況に陥りました。そうしたなか、特命担当として、グループ企業から2020年に異動してきたのが、常務の香川(誠二)です。われわれは香川直轄の部隊として、DX部発足前から特命業務のプロジェクトに携わっていました。

 さまざまな施策を行うなかで上がってきた課題が、インフラやデジタルビジネスの基盤が事業部ごとにバラバラであるということです。このままではイノベーションが起こらないばかりか、サイロ化してしまって会社としての総合力も出せないと。それを解決するための組織として発足したのがDX部です。当社の部署は事業部に所属していますが、DX部は香川の直轄部隊であるのが特徴です。

――DX部が取り組んでいる事業を教えてください。

菅野 事業として大きいのは、バンダイナムコアミューズメントのポータルサイト「ナムコパークス」の開発・運営です。

 ナムコパークスの中心となっているのは、キャラクターイベントです。リアルな場で実施している物販やくじ引きといったものをeコマースでもご提供しましょうというところから始まりました。現在は、ナムコパークスにまつわるIPイベントやIPグッズといった販売、また、会員システムや顧客分析などにも着手しています。

ナムコパークスのサイト

 現在、ナムコパークスに「ガシャポンオンライン」がありますが、こちらは当社単体の事業ではありません。もともとは、グループ会社のバンダイが別のサイトで運営していました。オンラインでも、われわれのプラットフォームであるナムコパークスが担当することをバンダイと合意できたので、共同事業として運営しています。これにより、OMO(Online Merges with Offline)の素地が整ってきたと思います。