今なおアナログ放送を続けるラジオ。1988年から放送を開始した東京を代表するFMラジオ局J-WAVEは、2006年にデジタル専門の子会社「J-WAVE i」を設立し、デジタル事業に本格参入した。J-WAVEが考える、ネット全盛時代におけるラジオの価値とは? J-WAVE 取締役 デジタル戦略局長、J-WAVE i 代表取締役社長の小向国靖氏に話を聞いた。
コロナ禍を経て、人々の価値観や行動様式が変化する中、大きな変化を迫られたエンタメ&メディア業界。本特集では、XR・メタバース・NFT・5G・AI・ビッグデータなどの先端デジタル技術を駆使し、企業変革や事業創出に取り組むキーパーソンへのインタビューにより、エンタメ&メディアの未来を展望します。
- 「お笑い」の仕事がコロナ直撃で様変わり、吉本興業がDXに注力する必然的理由
- 西武ライオンズがDXで進める「ファン増加」「売上増」「チーム強化」の三刀流
- 武尊選手と1試合1億円の報酬保証!ABEMAが格闘技にこれほどまで注力する理由
- スクウェア・エニックスがNFTで挑む、全く新しいゲームビジネスの全貌
- CATVからヘルスケアまで手掛けるJ:COM、「地域DX」の強化で見据える未来
- “伝説の仕掛け人”北谷賢司教授が分析する、エンターテインメント業界の針路
- 「1秒チェックイン、1秒チェックアウト」にこだわったアパホテルDX化の強み
- 累計DL数2400万回超、マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」が拓くマンガの未来
- わずかな“揺らぎ”を増幅させヒットにつなげる、SME流エンタメDXの神髄
- UUUMグループのP2C Studio社が挑む、新しい事業モデル「P2C」とは何か
- 「小さなDX」から始まったTBSの変革はテレビの世界をどう変える?
フォローしたコンテンツは、マイページから簡単に確認できるようになります。
他のラジオ局に先駆けて設立したデジタル専門の会社
──小向さんが設立し、現在も代表を務めているJ-WAVE iはどのような事業を展開していますか。
小向国靖氏(以下・敬称略)J-WAVE iは、J-WAVEのWebサイト制作やマーケティング支援、J-WAVE以外のクライアントに対しての音声や動画を活用したコンテンツ制作を行うコンテンツプロバイダーとしてのソリューションを提供しています。
具体的には、インターネットラジオ「radiko」でのJ-WAVEのリスナーデータを調査分析したWebマーケティングや、自治体の防災行政無線をスマートフォン向けにしたコミュニケーションアプリの制作などを手掛けています。
──J-WAVE iは2006年に設立されていますが、そのきっかけや当時の状況はどのようなものだったのですか。
小向 J-WAVEi設立以前からJ-WAVEはCDを購入できるECサイトを立ち上げるなど、インターネットサービスを展開していました。当時は携帯電話のキャリアごとに新しいプラットフォームが次々に登場し、インターネットサービスを取り巻く事業環境は大きく変化していました。
インターネットサービスの需要が急速に拡大すると考えた私は、専門部署を設けてデジタル事業に本格的に取り組む必要があると経営陣に訴え、その結果としてJ-WAVE iという子会社を設立することになったのです。
設立当初は社内に人材がいないので、サービスの一部を外部の制作会社に委託していました。しかし、デジタル事業の会社を立ち上げたからには、従来のラジオ業界にはいないスキルを持った人材の育成が不可欠だと感じ、自社での制作へと方針の転換を図りました。自らサービスを開発し、事業を展開することで、テクノロジーの進化やトレンドの変化に素早く対応し、ノウハウが蓄積されるようにしていきました。
当時のラジオ業界において、デジタル事業の重要性に早期に気づき、デジタルを活用した新しいビジネスをいち早くスタートできたと考えています。