「共に強く。共に熱く。」のビジネスモデル
6年前の2017年秋、プロ野球「埼玉西武ライオンズ」を有する株式会社西武ライオンズは球団創設40周年の記念事業として、メットライフドーム(現・ベルーナドーム/埼玉県所沢市)に180億円を投資する大規模な改修計画を発表した。
工事はシーズンオフを中心に段階的に行われ、完全竣工は2021年3月だったが、その間に起こったコロナ禍で年間試合数の削減や無観客試合、有観客であっても入場制限があり、声出しや鳴り物応援なども禁止となった。
株式会社西武ライオンズの奥村剛社長はこう振り返る。
「私が現職に就いたのは昨年1月からですが、コロナ禍を通して我々の事業は“つなぐ事業”であることに気付かされました。チームや選手、お客さま、球場施設、この3つのトライアングルをいかに常時結びつけていくかが重要になります。
そこで、無観客や入場制限で球場に来られなくなったお客さまとどう距離を縮めていくか、どんな情報発信ができるかに腐心し、たとえば我々が提供するスマホアプリなども工夫を重ねて改良していきました。
人気のあるECサイトをより充実させ、商品の品揃えも増やしてお買い求めやすい状況を作る。あるいはライオンズの選手の情報をSNSで頻度高く更新し、各種SNSを網羅するコーナーを通じて、常に選手と近い距離にいることをお客さまに感じていただくといった施策です」(奥村氏)
選手、顧客、球場施設のトライアングルは、西武ライオンズのスローガンにも表れている。「共に強く。共に熱く。」がそれで、ファンの満足度アップでファンが増加→売上増と利益増→チームへの再投資でチームを強化する、という好循環を図る狙いだ。
「ベルーナドームを中心にしたこのボールパークで、熱狂するような新たな感動を生み出し、それを皆で分かち合う思いを『共に強く。共に熱く。』に込めました。お客さま、スポンサーさま、地域の皆さん、チームと選手、球団関係者と、全員の思いがこのスローガンに詰まっているわけです」(奥村氏)