西武ライオンズ代表取締役社長の奥村剛氏(撮影:内海裕之)
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コロナ禍を経て、人々の価値観や行動様式が変化する中、大きな変化を迫られたエンタメ&メディア業界。本特集では、XR・メタバース・NFT・5G・AI・ビッグデータなどの先端デジタル技術を駆使し、企業変革や事業創出に取り組むキーパーソンへのインタビューにより、エンタメ&メディアの未来を展望します。

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「共に強く。共に熱く。」のビジネスモデル

 6年前の2017年秋、プロ野球「埼玉西武ライオンズ」を有する株式会社西武ライオンズは球団創設40周年の記念事業として、メットライフドーム(現・ベルーナドーム/埼玉県所沢市)に180億円を投資する大規模な改修計画を発表した。

 工事はシーズンオフを中心に段階的に行われ、完全竣工は2021年3月だったが、その間に起こったコロナ禍で年間試合数の削減や無観客試合、有観客であっても入場制限があり、声出しや鳴り物応援なども禁止となった。

 株式会社西武ライオンズの奥村剛社長はこう振り返る。

奥村 剛/西武ライオンズ代表取締役社長

1967年生まれ。明治大学卒業後、1990年株式会社プリンスホテル入社。川越プリンスホテル支配人、サンシャインシティプリンスホテル総支配人、サンシャインシティ・川越総支配人などを経て、2019年4月同社執行役員(東京都市圏エリア担当 兼 東京都市圏エリア統括総支配人 兼 新横浜総支配人)に就任。2021年2月同社執行役員 管理部長、2021年4月同社執行役員 管理部担当を歴任し、2022年1月株式会社西武ライオンズ代表取締役社長 オーナー代行に就任し、現在に至る。

「私が現職に就いたのは昨年1月からですが、コロナ禍を通して我々の事業は“つなぐ事業”であることに気付かされました。チームや選手、お客さま、球場施設、この3つのトライアングルをいかに常時結びつけていくかが重要になります。

 そこで、無観客や入場制限で球場に来られなくなったお客さまとどう距離を縮めていくか、どんな情報発信ができるかに腐心し、たとえば我々が提供するスマホアプリなども工夫を重ねて改良していきました。

 人気のあるECサイトをより充実させ、商品の品揃えも増やしてお買い求めやすい状況を作る。あるいはライオンズの選手の情報をSNSで頻度高く更新し、各種SNSを網羅するコーナーを通じて、常に選手と近い距離にいることをお客さまに感じていただくといった施策です」(奥村氏)

 選手、顧客、球場施設のトライアングルは、西武ライオンズのスローガンにも表れている。「共に強く。共に熱く。」がそれで、ファンの満足度アップでファンが増加→売上増と利益増→チームへの再投資でチームを強化する、という好循環を図る狙いだ。

「ベルーナドームを中心にしたこのボールパークで、熱狂するような新たな感動を生み出し、それを皆で分かち合う思いを『共に強く。共に熱く。』に込めました。お客さま、スポンサーさま、地域の皆さん、チームと選手、球団関係者と、全員の思いがこのスローガンに詰まっているわけです」(奥村氏)