写真提供:共同通信社

 モノ消費からコト消費への移行を追い風に、日本のテーマパーク業界で圧倒的な強さを見せる東京ディズニーリゾート。“夢がかなう場所”での体験は多くの消費者の心を捉え、その唯一無二の空間とホスピタリティは、リゾートとその近隣エリアにある6つの「ディズニーホテル」でも再現されている。本連載では、ディズニーホテルの運営会社ミリアルリゾートホテルズを率いるチャールズ・D・ベスフォード氏が自身の考え方を明かした『ホテルの力 チームが輝く魔法の経営』(チャールズ・D・ベスフォード著/講談社)から、内容の一部を抜粋・再編集。ディズニーブランドとその顧客を徹底的に意識した独自の経営スタイルに迫る。

 第1回は、ベスフォード氏がホテル経営者として重視する「2つの視点」を解説する。

成功するホテリエは2つの目線を持っている

 ホテリエのキャリアは十人十色です。現場での接客が好きで好きでたまらない人、ホテルの設計まわりに興味津々な人、あるいは若き日のわたしのように、「いつかは総支配人に」と夢見る人。そんななかで、ホテリエとしての階段を駆け上っていく人たちには、ひとつの共通点があるとわたしは思っています。

 それは、「2つの目線」を持っていること。これは自分を含め、まわりにいる経営者や総支配人たち、また、それぞれの立場で高みを極めた人たちをたくさん見てきて気がついたことです。

「2つの目線」とはなにか。それは、「顧客目線」と「経営者目線」です。

 ホテリエとは、常にお客さまのためを考えて行動する仕事です。なにか困っていることはないか、どんな行動をしたら喜んでいただけるのか、どう声をかけたら気持ち良く過ごしていただけるか。どんな業務に従事していても、基本的には目の前のお客さまを喜ばせることを第一に考えるようになるものでしょう。

 そこで「目の前のお客さまを喜ばせられたら、それだけでOK」と考えるのか、「ビジネスとしての視点」も持てるかで、その後のホテリエ人生が大きく変化するのです。 

 たとえば、精いっぱいのサービスで「目の前のお客さま」を喜ばせる。それはとても大切なことですね。しかし一方、そのサービスは「すべてのお客さま」に提供できるものでなくてはなりません。お客さまによってサービスの質を変えることは、あってはならないことです。