2008年にオープンした「東京ディズニーランドホテル」内のスイートルーム
写真提供:共同通信社

 モノ消費からコト消費への移行を追い風に、日本のテーマパーク業界で圧倒的な強さを見せる東京ディズニーリゾート。“夢がかなう場所”での体験は多くの消費者の心を捉え、その唯一無二の空間とホスピタリティは、リゾートとその近隣エリアにある6つの「ディズニーホテル」でも再現されている。本連載では、ディズニーホテルの運営会社ミリアルリゾートホテルズを率いるチャールズ・D・ベスフォード氏が自身の考え方を明かした『ホテルの力 チームが輝く魔法の経営』(チャールズ・D・ベスフォード著/講談社)から、内容の一部を抜粋・再編集。ディズニーブランドとその顧客を徹底的に意識した独自の経営スタイルに迫る。

 第2回は、ベスフォード氏が視察時に意識する「2つのポリシー」、ホテルビジネスの中核を担う「3つのエンジン」、そして組織における「One Team」意識の大切さについて解説する。

「極上」ではなく「ふつう」を体験する

 先ほどお話しした通り、わたしはプライベートでもよくホテルを利用しているのですが、仕事の一環として、本格的に視察目的でほかのホテルに宿泊することも多くあります。過去には、世界中にあるウェスティンホテルを回ったり、フロリダにあるディズニーホテルを回ったりもしました。現在でも、都内に新しいホテルが開業したら、たいてい視察にうかがっています。

 そうした視察の際に、大切にしていることについてもお話ししておきましょう。

 まず、ホテルを視察するときのわたしのポリシーのひとつに、「開業から3ヵ月間は行かない」というものがあります。

 ホテルは、ふつうの会社のように徐々に大きくなっていくビジネスモデルではありません。準備期間中は、お客さまはゼロで売り上げもなし。オープンと同時に、一気に数百室分のお客さまがやってきます。

 言わば、たった1日で需要がゼロから100になります。

 オープンしてすぐは、どんなホテルでもあたふたするものですし、通常のオペレーションとはいきません。

 そんなスムーズでないオペレーションの様子を視察しても、あら探しになるばかりで学びにはならないですよね。視察に行くときには、「このホテルの良いところを見よう」という気持ちで、自社のより良いサービスにつながるヒントを探すべきです。

 3ヵ月ほど経てば運営が落ち着き、しっかりオペレーションが成り立ちはじめます。

 もうひとつのポリシーは、スタンダードなお部屋に泊まることです。