政財界を中心とする大訪問団で中国を訪れ、習近平国家主席と会談したブラジルのルーラ大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ブラジルのルーラ大統領が中国を訪問した。習近平国家主席と会談したほか、米国が安全保障上の問題を指摘するファーウェイの研究開発センターを視察するなど、両国の密接な関係を演出。両首脳はブラジルの課題に即した経済協力など15もの覚書にも署名した。一方、米国との関係でブラジルは、ウクライナ問題への姿勢などでギクシャクしたところを見せている。欧米寄りだった前政権との違いを明確に打ち出すルーラ大統領は、どこまで中国重視を強めていくのか。日本との関係はどうなっていくのか。

(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)

「ドルで貿易を行う必要があるのか」とも

「ブラジルには中国との関係に偏見がないことを世界に示した」

 4月12~15日にかけて中国を公式訪問していたブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領が会見で表明した。人権や台湾問題などを巡り、中国に対する米国やEU(欧州連合)をはじめとする西側諸国の強硬姿勢が強まる中、ブラジルは中国との関係を強化していくという意思を明らかにした。

 それだけではない。ルーラ氏は上海で、BRICS諸国のインフラ整備への融資を担う「新開発銀行」本部を訪問し、「先進国が参加せず、世界規模で展開する初めての開発銀行」と言及した。同銀行は、自身の後継者としてブラジル大統領を務めたジルマ・ルセフ氏が総裁に就いている(ルーラ氏は現在2度目の大統領職にある)。

 これくらいなら中国に対するリップサービスとも言えるが、さらにこう付け加えた。

「世界のあらゆる国がドルで貿易を行う必要があるのか疑問だ」