香港の中国連絡事務所の前で掲げられた「許志永を直ちに釈放せよ」と書かれたプラカード(資料写真、2014年1月27日、写真:AP/アフロ)

(福島 香織:ジャーナリスト)

 この春、習近平が「平和の使者」としてロシア・ウクライナ戦争の調停者の役割をアピールし始めたこともあって、EU諸国の首脳、ハイレベル官僚が相次いで北京詣でを行っている。スペインのサンチェス首相、フランスのマクロン大統領、EUのフォン・デア・ライエン委員長、ドイツのベアポック外相・・・。

 だが習近平の「新時代の大国平和外交」の背後に、圧迫の度合いが急激に増している庶民の人権問題があることを忘れてはならない。

服役中に壮絶な拷問を受けた余文生

 4月13日、著名人権弁護士の余文生とその妻、許艶が、北京市の派出所から呼び出されたまま連絡が途絶えた。余文生夫妻はその日、EU在中国代表部に訪問する予定だった。余文生夫妻は家族に、中国当局に「挑発罪」容疑で逮捕されたと口頭で伝えている。

 また人権弁護士の王全璋、王宇、包竜軍らが4月14日、警察から外出を禁じられた。おそらくは同13~15日に行われたドイツ外相の訪中と関係があるとみられている。

 EU代表部は4月13日に余文生夫妻がEU代表部に向かう途中で警察に拘留されたことをツイッターで発表し、即座に2人の釈放を要求する、とした。