共通通貨構想をぶち上げたブラジルのルーラ大統領(写真手前左)とアルゼンチンのフェルナンデス大統領(同右)(写真:ロイター/アフロ)

(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)

米国主導のOASに対抗する場で表明

「ブラジルとアルゼンチンは共通通貨『スル(「南」の意味)』の創設を目指す」

 2023年1月にブラジル大統領に返り咲いたルーラ・ダ・シルバ氏の発言がメディアを賑わせた。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれたラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会談前日の1月23日のことであった。

 これはルーラ大統領にとっては計算通りの仕掛けだった。

 ルーラ大統領は中南米諸国の地域統合を外交の最重要課題に掲げている。そしてCELACは、自身の働きかけにより、前回の大統領在任時の2011年12月に設立した、中南米諸国33カ国が参加する組織である。

 当時、中南米地域で左傾化の波が地域全体を席巻する中、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領など左派政権に呼び掛けて発足した。米国の影響力が大きい米州地域の国際機関「米州機構(OAS)」では排除されているキューバの参加も認めている。

 CELACはOASに対抗する組織を築くべく、将来的な中南米諸国の統合を目標に掲げている。つまり、首脳会談は共通通貨の創設の発表にはうってつけの機会であった。