米国では鉄道の労使交渉に議会が介入できる。混乱はひとまず回避したが・・・(写真:ロイター/アフロ)

決選投票となったジョージア州上院選で与党・民主党が勝利し、米国の中間選挙結果が確定した。下院は共和党多数となったものの、上院(定員100)は過半数の51議席を民主党が確保し、バイデン大統領は一応、面目を施す結果となった(その後、同党のキルステン・シネマ上院議員が離党表明)。だが、問題はこれから。多くの課題を抱えたまま2023年を迎えようとしている。今回は、事の次第では物価上昇に直結し、再び米国経済を混乱に陥れる可能性がある物流の停滞について取り上げてみたい。

(水野 亮:米Teruko Weinberg エグゼクティブリサーチャー)

コンテナ船の「渋滞」は解消されたが・・・

 バイデン大統領を悩ませる課題は山積している。内政に絡むものでは、共和党による大統領罷免手続き、止まらぬ物価上昇(インフレ)、利上げによるリセッションリスク、不法移民の流入、物流の混乱などのロジスティクス問題等々。外交問題では米中関係の悪化、ロシア・ウクライナ紛争への対応、米国の電動自動車購入者に対する税額控除制度を巡る欧州連合(EU)や韓国との対立・・・。枚挙にいとまがない。

 中でも米国民の生活を直撃しているインフレへの対処は最大の課題だろう。新型コロナウイルスのパンデミックやウクライナ問題による影響に加え、港湾や鉄道といった物流機能の停滞がインフレ圧力になったとされる。

 物流を巡る問題は、現時点では小休止している。

 筆者が住むカリフォルニア州南部には全米最大のコンテナ取扱量を誇るロサンゼルス/ロングビーチ港がある。そこに隣接した丘から眺める限り、2021年のように100隻以上の貨物船が港の沖での停泊を余儀なくされた光景は見られず、青い海が広がっている。

 ロサンゼルス港のコンテナ取扱量は2021年には過去最高の年間1000万TEU(TEUは20フィートコンテナ1個)を超えた。2022年前半も前年をさらに上回るペースで増えたが、8月以降には一転して前年同月比で二桁のマイナスを記録する月が続いている。10月のコンテナ取扱量は2009年以降最も少ない量を記録した。