すでに触れた複数免許取得ができなくなったカリキュラム改編も、断行したのは文科省から出向していた副学長だったと教員らは見ている。
福岡教育大学ではこれらの労働問題以外にも様々な問題が起きている。
学長選考会議の委員と大学の経営協議会委員を務める、宗像市長の伊豆美沙子氏の主導で、大学敷地内に福岡県立の特別支援学校を建設する話が持ち上がった。しかし、その場所は、土砂災害警戒区域内に指定されているなど安全性に疑問があり、異論が噴出している。それでも執行部はこの計画を進めている。
そもそも大学のほとんどが、土砂災害警戒区域内に位置していた。校舎も老朽化し、学生や教職員は危険にさらされている状態だ。安全性に関わる大学自体の問題も放置され続けているのである。
福岡教育大学で起きていることを詳細に見ていくと、他大学に比べて教員数や学生数に対して多く在籍している文科省関係者の存在が、大学の運営や研究、教育にプラスになっているとは言いがたい。ある教員は、次のように断じる。
「教員採用の抑制など、執行部が改革と称する労働環境の悪化によって、教員は疲弊しました。ただ、一番の被害者は、不合理なカリキュラム再編によって、従来なら取れたはずの資格が取れずに社会に放り出された学生です。もっと言えば、十分な教育を受けられなかった学生が教員になって、その教員に教えられる地域の子どもたちもまた被害者なのです。これは文科省からの出向者や天下りの役職者を増やした結果と言えるのではないでしょうか」
国立大学に出向していた職員が、理事へと出世して大学に居座るか、また他の国立大学の理事へと移っていくのは、事実上の再就職として大事なルートなのかもしれない。その結果、文科省の「植民地」と化す地方の国立大学が今後も増えていくことが懸念される。国立大学法人法の改正や、教授会の権限の弱体化、学長への権力集中といった国の政策は、その方向性をさらに加速させるだろう。
福岡教育大学の問題は、国立大学の暗い未来を示している。