意向投票を廃止したのは、全国の国立大学で福岡教育大学がもっとも早いと見られている。2014年の国立大学法人法の改正によって、学長選考会議が選考方法をすべて決められるようになった。この改正法の施行が2015年4月だったことから、いち早く取り入れた形だ。

 寺尾氏は再任後の2014年、それまで3人だった副学長を8人に、5人だった副理事を8人に増やすなど、役職者を大幅に増員した。あわせて、役職者に文科省から多くの現役出向者やOBを受け入れるようになる。主なポストは副学長、理事兼副学長、事務局長、副理事兼事務局次長などだった。

 さらに、2016年に学長選考会議の議長に就任したのは、元文科官僚の尾崎春樹氏だった。副議長には、文科省から天下ってきた事務局長が就任した。

 学長の権力を強める一方で、背後には文科省OBがにらみをきかせている構図と言えるだろう。また、尾崎氏は大分大学でも学長選考会議の委員を務め、目白大学では理事長の職にある。

 この体制で福岡教育大学の研究や教育が良くなったのであれば、まだ問題はそれほど大きくないのかもしれない。しかし、現実は逆の方向へと進んでいった。

学長や文科省関係者による「改革」の結果

 寺尾氏が再任された後、寺尾氏と理事ら一部の幹部によって教育から予算まであらゆることが決められるようになり、「改革」と称して様々な変更が行われた。

 その一つが、2016年度に行われたカリキュラムの変更だ。この年に入学した学生から、初等教育教員養成課程で教科ごとにコースに分かれて履修する教科選修制が廃止された。

 廃止によって学生は教科内容を専門的に学ぶことが難しくなった。このため小学校と中学校両方の免許を取得しづらくなり、学生のキャリアに影響しているという。

 この改革に伴って、初等教育の英語専修コースも廃止された。小学校高学年では2020年度から英語の必修化と、2022年度から教科担任制の導入が始まったが、こうした流れと逆行している。