また、同じ2016年度には、生涯教育系の課程が改編され、他のコースに加えて情報教育コースも廃止された。このコースでは、「情報」の教員免許を取得することが可能だった。2025年度の大学入学共通テストから新たな教科として「情報」が加わることが決まっていて、ここでも国の方針に逆行していることがわかる。

 代わりに熱心に行われているのが、学長の裁量で決められる予算の増額と教員の削減、それに研究と教育の予算削減だ。

 特に研究費の削減は顕著だ。基礎的研究費は2013年当時と比べると、2021年には4分の1から5分の1以下の配分しかないという。

 あわせて、図書館の購読雑誌数も大幅に減らされた。問題なのは、こうした削減が事前に示されずに行われるなど、予算配分が不透明になったことだ。

 教員の賞与の査定も不透明になった。査定の結果だけはわかるものの、どのような理由で評価されているのかは本人にもわからない。

 このような「改革」が行われるなか、2015年には寺尾氏が突然大学の英語名を変更した。それまでは「Fukuoka University of Education」だったが、「University of Teacher Education Fukuoka」となった。

 変更に際して、学内での審議や説明はなかった。この変更により、学生が留学した際に英語名が大学と認識されずに困ったケースがあったという。英語の文法から見ても違和感があるという声も出た。教員によるこれまでの海外論文の業績も、福岡教育大学のものなのかわかりにくくしてしまう。

 そもそも、混乱を引き起こす英語名の変更を、なぜ行わなければならなかったのか。寺尾氏からまったく説明がないために、教員は理解できないままだ。

「不当労働行為認定を不服」で提訴も最高裁で敗訴

 寺尾氏を中心とする大学執行部に対して、教員も黙ってきたわけではなかった。前述した2012年の給与削減強行に対して、福岡教育大学教職員組合は同年に減額分を未払い賃金として請求する訴訟を起こした。これは国立大学法人では初めて起きた裁判だった。ただ、最終的には高裁で教職員組合側の請求棄却で裁判は終わる。

 2013年の学長選考では、教職員による意向投票とは異なる結果となったことや、その理由が示されていないことに対して批判が高まり、学部と大学院の合同教授会は再審議を求めることを可決した。教職員組合も、同様に学長選考を批判したビラを配布した。

 このビラ配布をきっかけに、執行部が報復とも取れる行動に出る。