幸いにして、学校の校長先生、教頭先生が気を遣ってくれた。息子には「お父さん、大変だよね」と声をかけてくれ、ほどなくして息子は学校に通うようになったが、自衛官になるということは、家族にも迷惑をかけることを意味したのである。
個人的な話を持ち出したのには理由がある。2019年2月13日の衆院予算委員会で、立憲民主党の本多平直衆院議員が、安倍晋三首相のある発言を問題視した。その発言とは、2018年8月12日に安倍氏の地元、山口県下関市で行った講演でのものだ。
「ある自衛官は息子さんから『お父さん、憲法違反なの?』と尋ねられたそうです。そのとき息子さんは、目に涙を浮かべていたと言います」
本多氏はこの発言について、「これは実話か」「私は自衛隊の駐屯地のそばで育ったが、そんな話は出たことがない」「何県でいつごろどういう方から聞いたのか」などと、あたかも安倍氏が作り話をしているかのように追及した。
安倍氏は「私の言うのがウソだというのか? 無礼だ」と反論したが、本多氏の「追及」に怒っているのは安倍氏だけではなく、私のような世代の自衛官、自衛官OBも怒っているはずである。多かれ少なかれ、似たような経験はしているのだ。
自衛隊は憲法違反と考える国民は少なくなっているとはいっても、憲法学者の大半は自衛隊を違憲とみなしている。いざ、というときに国民の間で「自衛隊は違憲」という認識が広がるかもしれない。命がけの任務に就く自衛官に対し、最低限の敬意を払ってほしい。とまではいわないとしても、憲法との関連において少なくとも「普通」に扱ってほしい。憲法改正は自衛官の悲願である。