個人的な話になって恐縮だが、35年ほど前にマンションを購入したときのことは、苦い思い出として残っている。書類の記入を進めていると、職業欄がある。私は「海上自衛官」と書くべきところを「公務員」と書いた。誰かにそうしろと言われたわけではない。だが、自分の職業を「自衛官」と書き込むと、予想もできない不利益を被るのではないかと感じ、反射的に「公務員」と書いてしまったのだ。

 本来であれば、自衛官は誇るべき職務だ。私自身、退官した今でも海上自衛隊を誇りに思う。悲しいかな、それでも自分の職業を堂々と書けなかったのである。

 何しろ、横須賀の防衛大学校の学生が京浜急行で、立っている人がいない車両の空き椅子に座っていると「自衛官は座るんじゃねえ」と文句を言われた時代である。私の先輩の話では、横須賀駅で防大の制服を着て歩いていると、卵を投げつけられ「憲法違反」と罵られたという。

 吉田茂首相は、防大の第1期生にこう語ったという。