(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
ウクライナ財務省によると、同国の2022年の財政赤字は8472億フリヴニャ(約3兆円、1フリヴニャ3.62円、以下同)と、前年から362.5%増加した(図表1)。その主因は、歳出が65.0%も急増したことにある。特に軍事費は625%と激増、歳出の総額に占める割合も37.6%と前年(8.5%)から急上昇した。ロシアとの戦争で急増した軍事費が、ウクライナの財政を圧迫したわけだ。
【図表1 ウクライナの財政収支】
財政赤字の急増を受けて、2022年のウクライナ政府の債務残高は4兆728億フリヴニャ(約14兆7000億円)と前年から52.4%増加した(図表2)。とりわけ目立つのが、対外債務の急増だ。
国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)といった国際金融機関による金融支援や米国と欧州連合(EU)による支援が、こうした対外債務の急増につながった。
【図表2 ウクライナ政府の債務残高】
いわば、戦時下のウクライナの財政を支えているのは、欧米を中心とする国際社会による金融支援に他ならない。これが継続するうちはウクライナの財政は持続可能であり、ロシアとの戦争も継続できる。そのため、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は国際社会に対し、さらなる金融支援の実施を求めている。
もっとも、戦争の長期化を受け、欧米にはウクライナに対する一種の「支援疲れ」が広がっているという厳しい現状がある。特に米国では、共和党とその支持者を中心に、追加の支援に対して慎重な声が強まっている。戦争が終わる展望が描けない以上、支援額が膨らむことへの警戒感が高まることは当然といえよう。
さらなる問題は、欧米を中心とする国際社会による金融支援は、基本的に返済を前提とする債務だということだ。