(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)
欧州連合(EU)の執行部局である欧州委員会は2022年11月10日、「自動車から排出される大気汚染物質に関して新たな排出基準を定める規則案」、いわゆる「Euro7」を正式に発表した。
これに対して反発を強めるイタリアは、ドイツとフランスとともに手を組み、Euro 7の見直しを迫る構想を持っているようだ。
ジョルジャ・メローニ首相が率いるイタリアの右派連立政権で経産相を務めるアドルフォ・ウルソ氏は、2月25日、イタリアのTVチャンネル・TGCOM24に出演し、欧州委員会に対して「現実的で具体的、かつ非イデオロギー的」な気候変動対策アプローチを採るように呼びかけ、ドイツやフランスと協力してEuro7の修正を求める構想を明らかにした。
Euro7の当初案に関しては、欧州自動車工業会(ACEA)やドイツ自動車工業会(VDA)、欧州自動車部品工業会(CLEPA)など、ヨーロッパの自動車業界が猛反発していた。現在の案は当初案に比べるとマイルドな内容になっているものの、自動車業界は引き続き、Euro7の内容が非現実的とのスタンスを堅持する。
そもそもメローニ政権は、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止するというEUの方針に強く反発している。この方針もEUが進める脱炭素化戦略の戦術の一つだが、すでに欧州議会が2月15日に最終承認を終えており、3月にも閣僚理事会で各国が正式に承認をしたうえ、正式に採用される見通しである。
だが、ウルソ経済相がEuro7の修正を主張したことで、イタリアが閣僚理事会で、2035年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する方針の承認を見送る可能性が出てきている。
閣僚理事会で決議は多数決であるため、この法案そのものは成立する見通しだが、イタリアはなぜこの段階で反旗を翻したのだろうか。