2月19日、乗客335人を乗せたJAL331便(羽田発福岡行き)が着陸予定だった福岡空港の「門限(運用時間の終了)」である午後10時に間に合わず、関西国際空港にダイバート(当初の目的地以外に着陸すること)し、翌日未明に羽田空港に戻った。結果として、乗客に約7時間もの長旅を、空港関係者に長時間勤務を強いることになった。再発防止のために航空会社とパイロットは、空港の「門限」問題にどう対処すればいいのか、自身の経験も交えて考えてみたい。
(杉江 弘:航空評論家、元日本航空機長)
空港によって異っている「門限」の運用
問題になったフライトの経緯を振り返っておこう。
JAL331便は離陸前の機体の整備等に時間がかかり、定刻の午後6時30分から約1時間30分遅れの午後8時すぎに羽田空港を出発したものの、福岡上空手前で混雑のため減速を指示され、門限の時間までに着陸できなかったという。
そこで関西空港までいったん戻って午後11時ごろに着陸。給油などの作業のため約3時間駐機してから離陸し、午前3時前に羽田空港に戻った。
航空用語で空港の「門限」のことを「curfew(カーフュー)」と呼ぶ。その運用は全ての空港で一律というわけではない。
どの空港でも基本は緊急事態の時は門限を超えての離着陸を許可しているが、それ以外は空港周辺の住民、自治体との約束事として運用方法が決められている。
例として挙げると、成田国際空港では長い間、夜の23時から朝6時の間は一切の離着陸が禁止(2019年10月27日からはA滑走路の運用時間が1時間延長となった)されており、緊急事態でもなければ、たとえ1分の延長も許されていない。