私にしても、ほかにやれることはないかという手探りはまだまだ続けています。これからはもう少し行政に食い込んでいきたいとも思っています。
自費出版のお手伝いをした経験を生かして、書店主導で教科書の副読本のようなものをつくれないか、模索しています。イメージしているのは小学校や中学校で使用する読書のための副読本です。
教科書のデジタル化も進み、幼少期から紙のページをめくる行為はどんどん減っていきます。ますます読書離れは進んでいくでしょう。だからこそ、読書普及の助けになればいいと考えています。
大事なのは、人、そして地域とのつながり
リアル書店がネット書店に飲み込まれてしまわないためにはどうすればいいのか? それを考えたときにも、お客さまから何かのたびに連絡をもらえるような関係性を構築していくほかはないと思っています。
ネット書店で購入できるような本をわざわざ注文してくれるお客さまの存在もありがたいものです。私に連絡をくれるお客さまのなかには、メールに「この本を注文していただけますか」とアマゾンのリンクを貼ってくる方もいます。
そこまで辿たどりついているなら、あとはカートに進んで注文すればいいだけです。それにもかかわらず、私に連絡をしてきてくれるのです。「急がないので、入ったら連絡ください」と言って、店まで取りにきてくれます。
時間がかかり、手間もかかるのに、そうしてくれる。そんなお客さまが実際にいるのです。ありがたい話です。そういう方が増えていけば、書店を支えてくれる大きな力になります。
書店の特性としてもっている信用性を生かして地域経済の輪に入っていく意味も大きいはずです。それによって毎月10万円の売上げがコンスタントにあげられるようになるかもしれません。毎月1000万円の売上げを目指すことよりも、そういう努力が大切になっていく気がします。
書店員には生き方が問われる
人や地域とのつながりのほかにもうひとつ大切なのは“書店で本を探す、本に出会う楽しさ”をお客さまに感じてもらうことです。
以前によく「さわや書店では、探している本が見つからないこともあるけど、ついつい何冊か買ってしまう」という言い方をするお客さまがいました。
目的の本が決まっているかどうかを問わず、本屋に行けば、気になるコーナーを中心にひと回りする習慣をもつお客さまは少なくありません。駅で、電車待ちの時間ができれば、とりあえず本屋に入るという方はまだまだいます。
そんなお客さまに「おっ」、「へえ~」と思わせられるかどうか。
好奇心にかられて、予定していなかった本を手に取ることは、リアル書店ならではの楽しみです。思わぬ出会いに対する期待感があるからこそ、欲しい本をネットで注文して済ませるのではなく、定期的に本屋に訪れるようにしてくれるのです。