そういう姿勢でやっていることによって広がっていくのが人の縁です。

 きれいごとを言いたいわけではなく、それがビジネスにつながっていきます。こうしたところにこそ書店が生き残っていく道筋が見み出いだせるのではないかとも考えています。

 一度の注文の売上げは大きくなくても、注文してくれるお客さんが増えていけば、まとまった売上げになります。コロナ2年目の2021年にしても、経営が好転する要因などはなかったにもかかわらず、売上げは復調傾向です。それは、こうした積み重ねがあったからだともいえるのです。

 まだまだやれることはある。やらなければならない。そう考えながら私は、日々、あちらこちらを駆けずり回っています。

 書店員の姿らしくないと思われるかもしれませんが、私自身はこれがこれからの書店員の姿ではないのかという気がしています。

 書店員が汗を流し続けていてこそ、本屋は存続できるのではないかと思うのです。

書店員ひとりひとりにやれることはある

 さわや書店の赤澤会長は、店の売上げがあがらないのは経営者の責任であり、スタッフの責任ではないという言い方をよくします。つまり、立地などの基本部分に問題があれば、店づくりなどの努力ではどうにもならないと言ってくれているわけです。

 しかし実際は、スタッフの側でもできることはあるはずです。

 たとえばの話、公共機関や大手企業の主催で作家が講演会に来るというのを知ったとき、そうなのか、と思うだけで終わってしまえば、先はありません。そうではなく、その作家の本を集めて店頭でミニフェアを行うことができます。それだけでもいいのですが、そこで終わってしまうのではもったいない。

 講演会の開催を知ったときには、まず主催者側に電話をかけられるかが問われます。何の電話かといえば、そのイベントとつながることができないかを探るためのものです。イベントに協力できることがあれば、主催者とも講演に来る作家などともつながれます。そこで会場における本の販売を請け負うことができたなら大きな成果です。売上げを伸ばせるだけでなく、店を認知させる宣伝にもなっていきます。

店内にイベントスペースを設け、地元作家の講演会なども行った(盛岡駅ビル内「ORIORI produced byさわや書店」にて、ORIORIはコロナ禍の影響を受け2021年に閉店)