ウクライナに供与が決まった米国の地対空ミサイル「パトリオット」(2022年11月ルーマニアに供与されたもの。米陸軍のサイトより)。これでロシア空軍にはさらに制限が加わる

 ロシア軍(露軍)の地上戦力は、侵攻から約10か月で、損失(投入数に対する損耗率は、戦車約40%、装甲車約70%、迫撃砲を含む火砲約60%)が多く、ウクライナ軍(ウ軍)の反攻を撃退するのが難しくなりつつある。

 露軍は、現状では一部を除き守勢に転じ守りを固めている。

 しかし、2月から3月に大々的に攻勢に出るとの情報もある。それができるのか、疑問ではあるが、今後もし攻勢に出て敗北すれば、ウラジーミル・プーチン政権には、極めて大きなダメージになるだろう。

 多様な戦闘がある中、航空戦はどうなっているのか。

 航空戦力としては、新型の露空軍と旧型のウ空軍である上に数量も露軍が圧倒していて露空軍優位だった。

 米国と並ぶ最新鋭の戦闘機などを保有する露空軍は、侵攻当初はあらゆる航空作戦で成果を上げていた。その様子はテレビ映像にもよく現れた。

 ところが現状では、露地上軍がウ軍の反撃を受けているのにもかかわらず、露空軍機は近接航空支援も行っていない。

 ウ軍の指揮所、長射程誘導砲(HIMARS)、防空ミサイルに対して、攻撃している動きはない。露領内から空対地ミサイルを発射しているだけだ。

露空軍機の攻撃目標と発射位置(行動位置)

出典:小野田治氏(空自OB)提供資料を筆者が要図にしたもの(発射位置は、攻撃目標からミサイルの射程の距離をロシア側に移動して見積ったものである)

(図が正しく表示されない場合にはオリジナルサイト=https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73530でお読みください)

 最新鋭の空軍機を保有し、圧倒的に優勢であったはずの露空軍が勝利できていないのだ。これは一体どうしてなのだろうか。

 その一つの理由として、最新鋭露空軍機がその数量と性能の差を生かし切れなかったことが挙げられる。