ミャンマーの民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チー氏。2017年11月撮影(写真:ロイター/アフロ)

 現在ミャンマーを掌握する軍政は、国内民主化運動の“シンボル”を政治的に抹殺しようとしている。

 昨年12月30日、ミャンマーの裁判所は、民主政府指導者だったアウン・サン・スー・チーさんに対する5件の反汚職法違反容疑に対する裁判において、合計で禁錮7年の実刑判決を下した。

 これでスー・チーさんに関わる19件全ての裁判が結審した。それらの判決を合わせると、禁錮刑は実に計33年となる。

 もちろんこれは2021年2月にクーデターで実権をスー・チーさんの民主政権から奪取したミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍事政権が、スー・チーさんの政治生命を完全に断つことを狙ったもので、国際社会や人権組織からは「不当裁判」「即時解放」を訴えられている。

 77歳のスー・チーさんにとって禁錮33年は実質的な終身刑といえる。軍政は国際社会に配慮し、スー・チーさんを自宅軟禁にするものと見られるが、これでスー・チーさんの政治生命終了を印象付け、抵抗を続ける民主勢力の士気を挫くことを狙っている。

スー・チーさんの全容疑

 スー・チーさんが訴追された19件の容疑と問われた違反法律、実刑判決の禁錮刑詳細を見てみよう。(ミャンマーの独立系メディア「ミャンマー・ナウ」より)

1:扇動罪 刑法505条 禁錮2年
2:総選挙コロナ違反 自然災害管理法 禁錮2年
1と2の計4年の禁錮刑を2年に減刑
3:通信機器不法輸入 通信法 
4:通信機器不法所持 通信法
5:党集会コロナ違反 自然災害管理法
  3と4、5で禁錮4年
6:州幹部から収賄 反汚職法 禁錮5年
7:財団土地借用 反汚職法
8:財団土地借用 反汚職法
9:財団事務所建設 反汚職法
 7と8、9で禁錮3年
10:ヤンゴン土地借用 反汚職法 禁錮3年
11:選挙不正 刑法 禁錮3年
12:国家機密漏洩 秘密保護法 禁錮3年
13:実業家から収賄 反汚職法 禁錮3年
14:不明 反汚職法
15:ヘリ目的外使用 反汚職法
16:ヘリ目的外使用 反汚職法
17:ヘリ目的外使用 反汚職法
18:ヘリ不法整備 反汚職法
19:ヘリ不法購入 反汚職法
 15から19まで5件で禁錮7年

 この19件の裁判で禁錮刑が33年となった。