台湾海峡を通航中の米駆逐艦(写真:米海軍)

(北村 淳:軍事社会学者)

 2023年1月5日、アメリカ海軍ミサイル駆逐艦が台湾海峡を通航した。

 アメリカ海軍第7艦隊司令部によると「今回の米艦による台湾通航は“定期的な所定の航行”であって、なんら特別な意味を持つものではない」としているが、アメリカ海軍が南シナ海で断続的に実施している「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)と同じく、中国に対する軍事的牽制の意図に基づいていることは明らかである(ただし、“牽制”になっているか否かは別問題ではあるが)。

 1月5日に台湾海峡を通過したのは、アメリカ海軍太平洋艦隊に所属しパールハーバーを母港にしているミサイル駆逐艦「チャン=フー」である。

 この駆逐艦の艦名は、第2次世界大戦中に勇戦したため「海軍十字章」(戦闘中に極めて英雄的な行為をなした勇者に対する勲章)と「銀星章」(1日または2日の戦闘などの短期間における勇敢な英雄的行為に対する勲章)を授与されたゴードン・パイア・チャン=フー米海軍少将に因(よ)っている。