住民に愛される地域猫

 猫たちは野良猫とはまるで違う。丸々と太り、毛並みも良く、何より人を恐れない。彼らが地域に暮らし、住民たちに愛され、世話をされてきた様子が見てとれる。正しい地域猫だ。どんなに猫のことを大事に思っていても、住人たちは引っ越していく。後に残された猫たちはどうなるのか。

 そこで、団地のイラストレーターや作家、写真家などの女性たちが中心となって、「遁村団地猫の幸せ移住計画クラブ」、略称・トゥンチョン猫の会が結成された。猫が本当に幸せになるために、猫にとって一番いい方法をみんなで考える。

(C)2020 MOT FILMS All rights reserved.

 最初に手をつけたのはTNR、地域猫活動の基本だ。TNRは、「Trap(捕獲)、Neuter(不妊手術)、Return(元の場所に戻す)」の頭文字。妊娠したり、子育てする猫は暖を求め、団地の地下などに潜りがちになるため、気づかれず、建物ごと壊される可能性がある。猫たちの去勢手術を急がなければならない。団地のあちこちにトラップを仕掛け、どの猫の手術がまだなのか、会のメンバーで情報を共有し合う。不妊手術をした猫は、処置したことが分かるように、耳の先をカットされる。

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 誰もいない団地の地下まで潜り、猫がいないかを確認。住んでいる人さえ知らない場所にも猫は自由に行き来する。敷地の中には公園、森、湿地、丘もあり、どんな猫がどの場所にいるのか、把握するだけでも大変な作業だ。