深刻な長文コメントを書くようになった保山氏

「奈良、時の雫」は2020年まではほとんど映像だけで、それに付された保山氏のコメントはなかった。あっても短い言葉で2、3行だけだったが、それもめったになかったのである。それが2021年から、深刻なコメントが多くなったのである。とくに今年の4月以降は、こちらが読むのもつらくなるような苦渋に満ちた赤裸々な長文が頻出するようになる。

 かれは撮影でステディカムをつけることができるように、人工肛門(ストマ)の手術を拒否した。そのため排便障害に苦しんでいる。「今日は便秘四日目、午前は病院、午後は下剤に頼って排便地獄。いつものことだけど、便を出し切ってお腹の張りが無くなるまで6時間以上は苦しみが続く」。便秘のため強い下剤に頼らざるをえない。そして何時間も便所にこもる。夜は眠れない。今度は下痢を止めるために下痢止めを服用する。つねに失便の恐怖がある。本人にしかわからないこんな苦しみが、毎日つづく。

 身体的苦痛以外に、心ない人間の仕打ちに悩まされる。テレビ・雑誌などで保山氏の知名度が上がるにつれ、誹謗中傷のメールが増えた。

 2021年7月7日の「明日香村にて」の回に、「今日は人生で最悪の日」と1行。翌日、「これまで途方もない時間をかけて積み重ねて来たもの。誰も想像すら出来ないだろう。それが他人の悪意によって一瞬で奪われた。誰も私を守ってはくれない。私のすべてを奪った輩、見て見ぬふりをする輩、私は一生忘れない」との文章が書かれている。いったいなにがあったのか。

 月一回行っている上映会の予約を無断でキャンセルされる。ライブ配信で投げ銭をお願いすると、「わざわざ千円を振り込むのは面倒だからやめた」とわざわざ嫌味をいってくる者がいる。そのくせ「来月もライブ配信を続けてくれ」。それだけではない「まだ生きているのか?」とか「お前の病気は嘘だ」などの、病気に関する誹謗中傷が後を絶たない。そのメールのひとりが「過去に深い関わりのある人だった」ことが判明する。

 保山氏の映像を見るくらいだから、おそらく年配の人間なのだろう。保山氏は「最初は気にしていないというより、気にする余裕などなかった。病気の治療に苦しんでいる最中に言われても、気にするのがバカらし」いと放っておくしかなかった。だがやはり、そんな悪意にみちたメールなど、心に毒が蓄積されていくようで見たくない。メールを開くのが恐怖になった。