写真はイメージです(写真:ロイター/アフロ)

 米中の政治的対立や、ウクライナ侵攻などをきっかけに世界経済の分断化が加速しており、日本のものづくりが根本的見直しを迫られている。経済安全保障の観点から国内生産を強化する動きそのものは正しいが、どこでつくった製品を、誰に売るのかという基本戦略がなければ絵に描いた餅になってしまう。(加谷 珪一:経済評論家)

最先端半導体の国産化を目指す

 トヨタ自動車やNTTなど国内企業8社が出資し、次世代半導体の国産化を目指す新会社「Rapidus(ラピダス)」が設立された。

 日本は半導体における国際競争に敗れた結果、半導体を国内製造するのが難しい状況となっている。特に最先端半導体の多くが台湾製であり、台湾の場合、中国による侵攻リスクがあることから、有事の際の調達リスクが以前から指摘されていた。

 政府は4000円億円を投じ、台湾TSMC(台湾積体電路製造)の工場を国内に誘致している。だが、同社が建設した工場は最先端の製造プロセスではなく、1世代あるいは2世代前の技術(22~28ナノメートル:ナノは10億分の1)である。

 DRAM(短期記憶用半導体)分野では、米国の半導体大手マイクロン・テクノロジーが、広島県の工場で最先端プロセス(1ベータ)の量産を開始したが、自動車や家電・スマホの中核をなすロジック半導体については、日本国内で製造できる体制は整っていない。こうした状況を打開するため、日本の大手企業と政府が一体となって量産体制の確立を目指したのが、今回設立されたラピダスである。