習近平独裁体制で中国の半導体産業は周回遅れになる可能性がある

 2022年10月7日、米商務省の産業安全保障局(BIS: Bureau of Industry and Security)は、中国による高度な半導体の購入や製造、スーパーコンピューターの開発を規制する措置を発表した。

(詳細は後述する3の(4)「半導体の輸出管理規制を強化するための新たな規則」を参照されたい)

 新しい規制では中国企業と半導体の先端技術や製造装置を取引する場合には、新しい許可が求められる。

 米商務省は「(中国が)高度なチップを入手し、高度な半導体を製造する能力を制限するものだ」と説明した。

 また、新しい規制では、米国人が中国の半導体工場で勤務することなども制限した。ブルームバーグの報道によると、中国の工場で働いていた米国人はすでに去り始めているという。

 BISは、「こうした製品や能力は、大量破壊兵器の開発を含む軍の現代化および人権侵害に使用されている」と指摘して、規制の発動を正当化している。

 ジョー・バイデン政権は、今回の半導体の輸出管理規制の強化により、中国のハイテク産業育成戦略である「中国製造2025」の達成を本気で阻止しようとしていると筆者は見ている。

 さて、現在繰り広げられている米中の対立の根底には、覇権国・米国と新興国・中国の覇権争いがあると筆者は見ている。

 米国の著名な政治学者グレアム・アリソン氏の歴史的検証によれば米中対立は75%の確率で武力衝突に至ると見られている。

(詳細は拙稿「歴史検証が弾き出した米中戦争勃発確率75%」(2020.8.5、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61554)を参照されたい)

 米中の武力衝突を回避するには、中国の軍事力増強の基礎である中国の経済力を弱体化し、米国の覇権に挑戦する中国の意欲を未然に削ぐことが最善の方法であると筆者は考えている。

 米国の為政者もそのように考えているのであろう。米中覇権争いは、これまでのところ、武力衝突ではなく、経済分野において、貿易戦争、5G(第5世代移動通信システム)戦争として繰り広げられてきた。

 そして今、半導体戦争に突入した。