(豊 璋:韓国人コンサルタント)
韓国ソウルではやたらとカフェが多い。私の住む江南のある地区を見ても、路地裏交差点に、あわせて15店舗もカフェがある。すべて路面店だ。ソウルを訪れる日本人旅行者の一つの楽しみとしても、韓国カフェは人気だと聞く。
「BTS(防弾少年団)」がデビュー前、宿舎に使っていた江南地区のビラ(アパート)も、今はカフェになっている。BTSが無名の頃、ただ住んでいたというだけで世界のファンが通ってくるのだ。
先日、打ち合わせのため、福岡県博多に行く機会があった。その時に、同行したカミさんが博多区の路地裏にひっそりと営むカフェに行きたいと言うので、一緒に行くことにした。
正直、猫舌な私にとって、コーヒーとはアイスコーヒー、もしくはホットをぬるくして飲むので、正直インスタントや缶コーヒー(微糖)で十分である。ただ、仕事で訪れた博多で相手をしてやれない罪悪感もあり、打ち合わせ前にカミさん要望のカフェを探し出したのだ。店では当然、アイスコーヒーを注文した。
そして、店内で座ったところ、われわれのテーブルの後ろのソファーに座っていた男性二人が、いきなり大きな声(韓国であればさほど大きくないが、静かな店では十分な音量)で「李明博大統領の頃は……」と韓国語で話し始めた。
突然の韓国語にゾッとしながら、「ここでも政治の話してるわ」と私はカミさんにつぶやくと、カミさんも苦笑いしかなかった。
美味しいコーヒーをいただこうとわざわざ探したカフェで、韓国人の政治の話を聞こうとは思いもよらなかった。
韓国でのカフェでは、注意深く聞き耳を立てていると、必ずと言っていいほど日本の話(政治、ビジネス、観光)か韓国政治(日韓問題含め政治批判、評価)の話が聞こえてくる。これは、みなさんが想像している以上に多い。
その最たるものが、デモの時だ。