11月8日は米国中間選挙である。現在、その結果が判明しつつあるのだが、筆者を含め多くのロシア関係者はこの選挙結果が現在進行中のウクライナ紛争に大きな影響を与えると考えている。
しかし、実際に選挙結果が明らかになる前に、米国の対ウクライナ政策変調の兆しが明らかになりつつある。
1. バイデン政権、ウクライナ支援政策転換
例によって日本のメディアではあまり話題にならないのだが、11月5日の米ワシントン・ポスト紙には「U.S. privately asks Ukraine to show it’s open to negotiate with Russia(米国はウクライナに対しロシアとの交渉姿勢を示すことを密かに要求)」と題する記事が掲載された。
この記事が報じる現政権幹部のコメントによれば、米政権はロシア政府、特にウラジーミル・プーチン大統領との交渉を頑強に拒否しているウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対して交渉テーブルに着くことを求めるわけではないという。
むしろ、そうした姿勢を示すことで西側諸国の支援継続を促す「calculated attempt (文字通りの「計略」)」であると説明している。
ワシントン・ポスト紙といえばリベラル派、すなわち民主党寄りのメディアであることは周知の事実である(アマゾンのオーナー、ジェフ・ベゾフ氏が事実上のオーナーである)。
つまり、バイデン政権が進めてきたウクライナ経済・軍事支援の政策転換を同紙が報じていることは興味深い。
バイデン現政権の対ウクライナ政策の変更を匂わせる記事はこれだけではない。11月6日の米ウォールストリート・ジャーナル紙には「Senior White House Official Involved in Undisclosed Talks With Top Putin Aides(ホワイトハウス高官がプーチン大統領の上級補佐官と秘密会談)」と報じられた。
この報道によれば、米国や同盟国の当局者の話として国家保障担当のジェイク・サリバン米大統領補佐官がロシア大統領府のユーリ・ウシャコフ大統領補佐官やニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記と非公開の協議を行ったとされるが、その詳細は明らかにされていない。
いずれにしても、これらの報道が示唆するのはバイデン政権が対ウクライナ政策の変更に迫られているという状況であろう。