(C)2022「わたしのお母さん」製作委員会

 母と娘。その関係性は母と息子、父と息子とは違う複雑さがあると聞く。同性で自分によく似た娘に母親は自分と同じ轍を踏ませぬよう、厳しく躾ける傾向にあるらしい。

 同性の息子に一人の人間として、別の人格として、向き合える父親と違い、母親は娘に特別な執着があるのか。娘である私には確かに思い当たる節がある。『わたしのお母さん』はそういった私的な記憶を思い起こさせる。すっかり忘れていた当時の息苦しさが蘇ってくる作品だ。

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予期せぬ母との同居

 夕子(井上真央)は夫(橋本一郎)と二人暮らし。ところが夕子の弟で長男の勝(笠松将)一家と暮らしていた母・寛子(石田えり)がボヤ騒ぎを起こしてしまい、夕子夫婦の暮らすマンションに一時的に身を寄せることになった。久しぶりの再会に照れ隠しなのか、はしゃぐように喜ぶ母。裏腹に夕子の気持ちは浮かない……。

 井上真央の何とも言えない表情に自然と感情移入する。しばらく会わないうちに、ある日突然、友だちのような距離感で迫ってくる母。あんなに厳しかったのに。子どもの頃、求めても、応えてくれなかったのに。母にとっては突飛なことではないのだろうが、娘にはあまりに唐突だ。そして年を追っていくごとに今度はこちらを頼ってくるようになる。あんなに強かった、怖かった母が。