セバストポリ港で行われたロシア海軍記念日のパレードのリハーサル。ミサイル巡洋艦「モスクワ」の前を水陸両用車が隊列を組んで走行している(資料写真、2017年7月27日、写真:ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 10月29日の現地時間早朝、ロシアに占領されているクリミアのセバストポリ沖合において、ウクライナ軍がドローン(UAV)と水上ドローン(USV)による同時攻撃を行いました。

 これにより巡洋艦「モスクワ」の撃沈後、ロシア黒海艦隊旗艦の地位を引き継いでいたフリゲート「アドミラル・マカロフ」他が損傷したと見られています。おそらく意図的に黒海艦隊の旗艦を狙ったものと思われます。ロシア国内での厭戦機運増大を期待したのでしょう。

 ウクライナ軍は、作戦面において要所要所で奇襲とも言える予想外の手法を使ってきます。「モスクワ」撃沈の際にもウクライナ国産の対艦ミサイルネプチューンを使用しましたし、今回も“UAVとUSVの同時使用”という手法を用いることで迎撃を回避しています。

 同時使用により、狙われたロシア艦の戦闘指揮所では大きな混乱が生じたことでしょう。そして、それによって対処が遅れ、被弾することになったと思われます。

 また、UAVだけでは艦艇に対する十分な攻撃力を期待することが難しかったため、まずUAVで艦艇の上部構造に損害を与え、レーダーなどによる警戒能力の低下、ミサイルなどによる対処能力の低下をもたらし、その上で、低速で接近させることは困難ながら大量の爆薬により大きな攻撃力を期待できるUSVを突入させたものと思われます。