Web3、メタバース、NFT・・・、次世代のテクノロジーとして様々なワードが賑やかに取り上げられている。あたかも日本の活路がそこに広がっているかのように。だが、すでに熱気が冷めているにもかかわらず、日本で過剰な期待がかかっているものもある。砂漠で蜃気楼のオアシスを追ってさまようことのないよう、冷静に予測するにはどういった視点が必要か。
(山本康正:京都大学 客員教授、東京財団政策研究所 主席研究員)
日米であまりに違うWeb3への温度
2022年に入って以来、「Web3」や「メタバース」といった言葉を聞かない日はありません。この新たな潮流にどう向き合っていけばいいのか? ビジネスの最前線に立っている人ほど、そんな悩みを抱いているのではないでしょうか。
しかし、日米を頻繁に行き来している筆者から見ると、現時点における最大の懸念点は、Web3やメタバースなど実態がよく理解されていない一部領域への期待感の温度差があまりにも日米で大きいことです。かつては技術大国だった日本が、ソフトウエア、インターネットを始めとするデジタル時代以降、テクノロジービジネス「音痴」に陥っていると言ってもよいでしょう。
メタバースに関してはメタ社(旧フェイスブック)が構想の発表と社名変更から1年が経ちましたが、消費者向けへのサービスの普及が進まず、早くも方向転換を余儀なくされています。株価も大幅に下がっています。2023年2月22日にはソニーから「プレイステーションVR2」の発売が予定されるなど、微かな明るさはありますが、大ヒットコンテンツが出てこない限りは厳しい状況が続きそうです。
また、日本がWeb3こそが2022年最大のトレンドとばかりに盛り上がっているのに対して、米国ではすでに熱気が冷め、冷静な眼差しで受け止められる段階にシフトしているように見えます。
2022年上半期には大きな盛り上がりを見せていたNFT(非代替性トークン)は、バブルが弾けたかのように価格が急落し、現在は下火になっています。7月には世界的な人気ゲーム「マインクラフト」の開発企業が、「マインクラフト」のゲーム内ではNFTを許可しない方針であることを発表しました。
ほぼ同時期に、テスラCEOであり今や世界一の富豪として知られるイーロン・マスク氏が、テスラ保有のビットコインの75%を売却、ドルに転換したニュースも報道されています。暗号資産が再び暴落相場を繰り返して、「冬の時代」に突入しているという見方もできるでしょう。