王貞治(2016年撮影) 写真/アフロ

(小林偉:放送作家・大学講師)

アスリート歌合戦!?

 ドラフト会議に、日本シリーズ、フィギュアスケートのグランプリシリーズや、サッカー・ワールドカップなどなど・・スポーツの秋たけなわということで、今回はこんな趣向でお送りしたいと思います。

 題して「アスリート歌合戦」!

 最近は少なくなりましたが、昔は人気の高いスポーツ選手が歌手デビューすることが結構ありました。広く国民に認知されるような偉業を達成したスポーツ選手には、商魂たくましい音楽業界人から「ちょっと歌でも出しませんか?」といった“魔の手”(?)が伸びていたんですね。

 CDが売れない今では、音楽業界も積極的ではないでしょうが・・・。

 さて、過去にはどんな方が“歌手デビュー”されていたのか・・・例えば、こんな方。

●『白いボール/王貞治&本間千代子』

 何と、現・福岡ソフトバンクホークス球団取締役会長、世界の王貞治です。

 今年、ヤクルトの村上宗隆選手に日本人の年間ホームラン記録を塗り替えられてしまいましたけど、実に58年も破られなかった年間55本を打ち立てたのは勿論、生涯通算868本塁打(!)、13年連続ホームラン王、二度に亘る三冠王などなど、国民栄誉賞も受賞されている、文字通り日本プロ野球界のレジェンドです。

 そんな彼が、年間ホームラン数55本の日本記録を達成した翌年の1965年にリリースされたのが、この「白いボール」という曲。作曲はあの冨田勲。デュエットパートナーには、当時歌手・女優として人気があった本間千代子を迎えています。

 意外ですが(失礼!)、朴訥とした王さんのヴォーカルにも味がありますよね。

 ちなみに、現役時代のチームメイトにしてライバルの、ミスターこと長嶋茂雄は王貞治より28年遅れの1993年に、WANDS、ZARDなど当時、音楽プロダクション「BEING」に所属していたアーティストと共にシングル『果てしない夢を』にゲストヴォーカルとして参加。歌手としての初陣を飾っています。

 また、現・巨人監督の原辰徳も1982年にシングル『どこまでも愛』でデビュー。後にアルバム『サムシング』もリリースされています。

 この他にも、星野仙一、小林繁、落合博満、中畑清などなど、歌手デビューしたプロ野球選手はたくさんいらっしゃいますが、特筆すべきは、元巨人の助っ人、ウォーレン・クロマティ。彼は巨人在籍中の1988年に「クライム」というバンドを結成し、シングル『ガール・ライク・ユー』と、アルバム『テイク・ア・チャンス』をリリースしているのです! 但し、バンドではヴォーカルではなくドラムを担当していましたので、厳密には“ミュージシャン・デビュー”ですが・・・。